【速報】2023年9月 高級ブランド3社業績比較
11/10(金)にラグジュアリー大手3社の最後の1社、Richemontの中間決算が発表されたので、これでLVMH, Richemont, KERINGの3社の9末の業績が揃いました。そこで、今回はこの3社の比較と、特徴について解説していきたいと思います。
3社比較の要約
3社の売上及び営業利益の、前年同期との増減率比較になります。Richemontは、2Qであり営業利益の開示があったため記載しています。一方、LVMHとKERINGは3Qで営業利益の開示がないため、参考として6末の増加率を示しています。
今回Richemontが営業利益率が前年同期比2%減少している、という点が1つ注目ポイントになります。売上増加率の各社Q推移としては以下のとおりとなっています。
こちらを見ると3社とも右肩下がりになっており、特にKERINGが前年同期比マイナスとなっている点、業績に急ブレーキがかかっているのが分かります。
LVMHについて
上記でみたとおり、3社のうち最も売上増加率高かったのがLVMHでした。ここではもう少し細かく、4点に分けて見ていきます。
1.売上
1点目は、売上の増加率が+14%と高い増加率を示しているところです。こちらは、今回の3社の中でも2Qに引き続きトップになります。なお、上記のグラフの10%と4%差がありますが、こちらの14%は為替等の影響を排除した、オーガニックグロースになります。
2.セグメント別
セグメント別ですが、お酒がマイナス7%となっています。前回同様コニャックの減少によるものであり、アナリスト説明においても2Qと状況は同様という説明でした。
一方、主力のファッション&レザーは+16%であり、化粧品も2けたの12%増加となっているため、この2つのセグメントについては好調であることが分かります。
3.地域別
地域別ですが、アメリカ以外は2桁成長でした。こちらは状況としては2Qの時と全く同じであり、アメリカ市場はまだ回復には時間がかかりそうな気配です。
4.日本
日本の売上伸び率は31%でした。2Qの際も30%台なので、前回に引き続き今回も好調を維持し続けています。10月からは入国制限緩和後の比較になるため、今後どのくらいの伸び率になるのかは引き続き注視していきたいと思います。
Richemontについて
リシュモンは3月決算のため、9月末が第2四半期となります。売上増加率が1桁に突入してしまい、若干ビジネスにブレーキがかかってきているようにも見えます。
1.売上
4-9月の売上は12%増加でした。為替の影響を排除した純粋な増加率でみると、2桁成長を維持しているのでLVMH同様に決算としては良い結果だったと思います。
2.セグメント別
12%の売上増加はどのカテゴリーから生じたのか、という点ですが、宝石のメゾンが10%増加、時計ブランドが3%減少となっており、主に宝石メゾンが要因となっているのが分かります。なお、宝石メゾンとは、RIchmeontではカルティエ、ヴァンクリーフアーペルになります。
時計の成長率がマイナスになっているのが非常に重要な点になります。今回の一時的な影響によるものなのか、あるいは時計需要が減少しているのか、は今回の結果のみでは判断できません。しかしながら、次四半期も同じように時計ブランドがマイナスとなった場合は、一過性ではない可能性もあるためトレンドを引き続き注視していきます。
3.地域別
地域の視点から見ると、APACと日本を併せると50%になるというのが一つ大きな事件です。アメリカ市場の不調もあり地域別のポートフォリオがアジアに集中している様子が伺えます。もう少し北米やヨーロッパ側のシェアを伸ばしていく施策が必要かもしれません。
4.日本
日本市場になりますが、こちら日本は13%増加になっています。原因としては好調なインバウンド需要に支えられてという事になり、今後も続いていくのかという点については、LVMH同様に引き続き注視していきます。
KERINGについて
KERINGは、今回の決算でFY23初めて売上前年同期比でマイナスを示す状況になっています。
1.売上
売上ですが-2%と減少となっております。これは他の2社プラス成長を示しているなか苦戦が目立ちます。4半期ごとに悪化しているため、回復の基調も見えずという状況です。とは言え、新しいクリエイティブデザイナーも就任しているため、これをきっかけに再浮上できるかというところが注目ポイントです。
2.セグメント別
次に、ブランド別の視点です。上記マイナスとなってしまった不調の原因ですが、最大ブランドのグッチが-2%とマイナスになっているのが最大の要因です。KERINGはグッチのウェイトが大きいため、良くも悪くもグッチのパフォーマンスがそのままダイレクトに会社業績に影響を与えてしまう形になります。
3.地域別
地域別ですが、ここもアメリカの落ち込みが著しい状況になっておりマイナス21%となっています。他2社と比較してもアメリカ市場の不調が目立つ形になっています。
4.日本
日本ですが、こちらのみ2Qに引き続き絶好調であり売上+32%と驚異的な数値となっています。全体的に不調ななかであったため、もし日本もマイナスとなっていたら、決算はさらに悪化していたはずです。逆にいうと、日本のパフォーマンスは極めて良いため、あとはどれだけこの好調を維持できるか、という点になります。
以上をまとめると、各社で好調と不調が分かれていますが、ラグジュアリー業界全体としてみると少しペースが落ちたのかなと思う決算内容でした。次の3か月がクリスマスシーズンを含む形になるので、ここで各社どこまで伸ばせるか、が年度末決算の数値に大きく影響してくると思います。また次回の決算発表の際に、記事で取り上げていきます。