コラム

仏ロレアルがイソップ買収 – 買収価格は妥当か?

久しぶりに大型のブランド買収ニュースが飛び込んできたので、このブログで少しコメントしようと思います。

4/5付の日本経済新聞にて、仏ロレアルがイソップの買収に合意したとの報道がされました。

日本ロレアル、仏ロレアルとナチュラ・アンド・コーが「イソップ」の買収に合意 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

実は、イソップについては、1-2か月前からすでに買収予測の報道が出ており、資生堂、ロレアル、LVMHが興味を持っているとの内容でした。そのため、この3社のうちのどこかに、遅かれ早かれ買収されるのでは?とは思っていましたが、予想より相当早く驚きました。

イソップは日本でも路面店等、常に行列が出来ているイメージがあり、グローバルのなかでも日本市場の占める割合が大きいのでは、と予想します。その意味では、最近ブランドをある程度整理してきていた、資生堂が買収するのでは?と考えていたので、ロレアルというのは少し意外でした。

上述した日本経済新聞によると、2022年の売上5億3700万ドルに対して、取引額25.25億ドルとの事です。直近の2022年のナチュラル・アンド・コーのアニュアルレポートを見ると、イソップのセグメント別の情報が開示されており、Net income 132,677に対してIncome taxが-66,406なので、Income before taxは逆算すると199,083になります。Revenueが2,718,721とあるので、そこから計算すると利益率は約7.3%になります。この利益率を先ほどの、売上5億3700万ドルに乗じるとドルベースでは約3,920万ドルの利益という事になります。出典元のアニュアルレポートは下記のとおりです。

dcbb6f43-8279-2e1f-dddf-2c28f3bb010f (mziq.com)

ここから考えると、年間の利益約3,920万ドルに対して、取引額25.25億ドルとすると64.4倍となります。仮に利益変わらずであった場合、ざっくり言うと投資回収まで約64年かかる(厳密には違うのですが、単純化しています)という事になり、買収価格としては破格の取引額と言えます。これは逆に言うと、ロレアルが今よりはるかに高い利益を出す自信がある、という事になります。

ではどのようにして、という手段になりますが、日本経済新聞によると、中国市場に注目しているという旨のコメントが記載されており、ここからの利益をかなり見込んでいるのでは、と考えられます。今後数年のイソップの状況は、引き続き注視していきたいと思います。