コラム

【速報】2023年6月 高級ブランド3社業績比較

7/28(金)に大手3社の最後の一社、KERINGの2Q速報が発表されたので、これでLVMH, Richmeont, KERINGの3社の6末の業績が揃いました。そこで、今回はこの3社の比較と、特徴について解説していきたいと思います。

3社比較の要約

3社の売上及び営業利益の、前年同期との増減率比較になります。Richemontは、1Qであり営業利益の開示がないので、ブランクとしています。

LVMHとRichmeontの売上増加率近似している一方、KERINGが2%と非常に苦戦しています。また、営業利益率については、なんとマイナスに転じており、苦境が目立っています。

LVMHについて

上記でみたとおり、LVMHは全体的には絶好調と言えます。ここではもう少し細かく、4点に分けて見ていきます。

1.売上

1点目は、売上の増加率が+17%と非常に高い増加率を示しているところです。こちらは、今回の3社の中でもトップになります。なお、上記のグラフの15%と2%差がありますが、こちらの17%は為替等の影響を排除した、オーガニックグロースになります。

2.セグメント別

セグメント別ですが、お酒がマイナス3%となっています。こちらは、LVMHグループのセグメントでは唯一のマイナスなので、詳細をIRレポート見ると、シャンパン+8%、コニャック-11%と、コニャックの減少に起因していました。さらに理由を見ると、アメリカの景気減速や卸先の年初の在庫水準の高さによるもの、と説明がありました。

一方、主力のファッション&レザーは+20%で、こちらが全体を牽引しているのは明らかです。東京で開催されていたディオールのDesigners of dreamについてもIRレポートで触れられていました。

3.地域別

地域別ですが、アメリカ以外は2桁成長でした。とは言え、アメリカですら+3%とプラスで着地しているのは驚異的です。アメリカでは、IT業界を中心としたリストラや政策金利の利上げなどもあり、かなり不利な状況の中、それを最小限の影響で食い止めるところに底力を感じました。

4.日本

日本ですが、LVMHは日本を地域別セグメントで別掲しているので、日本のデータがダイレクトにIR資料から取れます。それによると、日本の売上伸び率は31%との事でした。為替の影響を除いたいわゆるオーガニックグロースで30%越えなので、いかに日本が好調かを示しています。

Richemontについて

リシュモンは3月決算のため、6月末が第1四半期となり、3ヵ月で計算されています。一方、LVMH及びKERINGは12月決算であり6月末は第2四半期となり6か月で計算されているため、その点のみご注意下さい。

1.売上

4-6月の売上は14%増加でした。以前ブログにて、コンサル会社ベインの2023年の高級ブランド市場予測は5-12%とされていたので、その点を勘案すると、スタートとしてはいい滑り出しかと思います。

2.セグメント別

その14%の売上増加はどのカテゴリーから生じたのか、という点ですが、宝石のメゾンが24%増加、時計ブランドが10%増加となっており、主に宝石メゾンが要因となっているのが分かります。なお、宝石メゾンとは、RIchmeontではカルティエ、ヴァンクリーフアーペルになります。

3.地域別

地域の視点から見ると、アメリカ以外は2桁成長になっています。この傾向は先述のLVMHと同様です。

4.日本

日本市場になりますが、こちら日本は14%増加になっています。また、もう一つ重要なのが、日本のシェアが世界全体の8%である、という点です。日本を独立で開示している高級ブランドは、あまり多くないのですが、仮に独立掲記していない場合は、世界全体の6-8%でざっくり試算する事が多いです。

KERINGについて

KERINGは、前述の2社と大きく異なるトレンドを示しています。

1.売上

売上ですが+2%とほぼフラットになっています。これは他の2社が2桁越えの成長を示しているなか、鈍化が顕著であると言えます。4-6月の直近3か月間の情報も、同IR資料に掲載されていましたが、こちらも+3%となっていました。たとえば、ここが+10%などで6か月全体で見たときに、先ほど見た+2%なのであれば、回復基調にある、と見れます。ただ、そういう訳でもなく、なので回復の兆しもまだ見えてない状況、となっています。

2.セグメント別

次に、ブランド別の視点です。KERINGのIRは他の2社と異なり、ブランドを1つのセグメントとしています。さて、不調の原因ですが、KERINGの中のナンバーワンブランドであるグッチが+1%とほぼフラットなのが、最大の要因です。ただし、2番手のサンローランも+7%であり、こちらも増加率2桁超えてきていないので、グッチだけが低迷している、とは言えない状況です。なお3番手のボッテガは+2%でした。

3.地域別

地域別ですが、ここもアメリカの落ち込みが著しい状況になっており、なんとマイナス22%となっています。この大幅な下落により、全世界における北米市場のシェアも大幅に落としており5ポイント減の22%となっており、地域別で西ヨーロッパとの逆転が起こってしまいました。

4.日本

日本ですが、こちらのみ絶好調であり売上+32%と大幅に上昇しており、こちらはLVMHよりも1ポイント上回っています。今回の中ではこの点が、一番驚いた部分でした。ただ、グッチは日本ではもともとアジア系を中心としたインバウンドに非常に強かったので、その影響を受けているのかもしれません。IR情報からは、国内客とインバウンド客の比率などは開示されていないので、これ以上の深掘りは出来ずになります。