コラム

MICHAEL KORSの買収 – アメリカン巨大ラグジュアリーの誕生?

今回は、MICHAEL KORSの保有するカプリホールディングスが、コーチを傘下に有するタペストリーに買収された件について、当ブログで少し解説していきます。

まずこの買収の記事、を読んでどのように感じましたか?恐らく、一番の気になる点は、以下だと思います。

MICHAEL KORSは消滅するのか?

結論から記載すると、恐らく

しません

理由

1. ブランド買収の特質

これは、さらに以下の2点に分かれます。

(1)統一ブランドのメリットがない

ブランドはそれぞれ異なる歴史やストーリーを持っており、商品とともにそれらのストーリーも併せてお客様に販売しています。例えば、ルイヴィトンがカルティエを買収したとして、その従来カルティエとして売ってた製品をそっくりそのままルイヴィトンにロゴを変えたら同じように売れるか、というとそうはなりません。

これは、カルティエの顧客はカルティエの歴史やストーリーに惹かれて購入するためです。

そのため、一般的にはラグジュアリー業界で買収が行われた場合、ブランド自体はそのまま残して、マーケティングや店舗改装などの投資を行い売上拡大を図る手法を取ります。

(2)むしろデメリット

上記でも述べたとおり、ブランドを統一してしまうとブランドコンセプトや歴史・ストーリーも合わさることになり、ターゲット層がブレてしまい顧客側が混乱してしまうためです。

この点、とても上手いのが、大手ラグジュアリーコングロマリットのリシュモンになります。リシュモンは、企業体としてはリシュモンとなっていますが、店舗では、カルティエ、ヴァンクリーフアーペルとして販売しており、法律で求められているような必要最低限のところでしたか、この名前が出てくることはありません。そのため、顧客側は社名を知らないかたが、ほとんどだと思います。

合併後の展望

マイケルコースのブランド自体は存続

この点は、上記で述べたとおりです。

LVMHグループを目指す

ニュース記事によると、合併後はLVMHグループを目指すと言われています。ただ、ここの点、私は非常に懐疑的です。どのような事かと言うと、LVMHは製品ポートフォリオでもバランスを取っており、ファッションや宝飾、お酒など分かれており、ファッション内でもルイヴィトン、ディオール、ロエベなど、比較的客層や商品単価もズレており、かつ富裕層をターゲットにしています。

一方、タペストリーはマイケルコースを買収したとはいえ、価格帯や顧客層が完全にバッティングしており、買収メリットがあまり感じられません。また、ポートフォリオという点では、ほぼ全てファッションであり非常にバランスが悪くなっています。また、アメリカの景気が落ちこむと、一気に業績が悪化するという、カントリーリスクも高いままです。そこを見据えると、

店舗数を削減するか、商品の価格帯を引き上げる

戦略としては、店舗数を削減するか、商品の価格帯を引き上げるか、あるいは両方か、という点になります。これは、ティファニーを買収した際のLVMHが同じように、商品の平均単価を引き上げるという戦略をとりました。

ただ、これはLVMHグループに買収されて、イメージ自体も少し高級になったので受け入れられた、という背景もあるので、タペストリーが同様に単価を上げる、とした場合、どのようにそのイメージを醸成していくか、というのが最大の課題だと思います。

引き続き同社の様子は注視していこうと思います。

Frankfurt,Germany, 03/01/2020: Shop window with logo of Michael Kors in the city centre of Frankfurt am Main