コラム

パテックフィリップ展- ファイナンスの観点から解説

6/25(日)に最終日を迎えたパテックフィリップ展、ファイナンスの観点から少し解説してみたいと思います。いったい、なぜこのような展示会を実施したのか?が少し見えてくると思います。

まず、パテックフィリップ展については、すでに終了してしまったのですが、概要については公式ホームページにありますのでリンク先を記載させて頂きます。

Patek Philippe | パテック フィリップ | ニュース | ウォッチアート・グランド・エキシビション / 東京2023

今回はファイナンスの観点から、という主題なのでパテックフィリップのブランドについての説明は割愛させて頂きます。簡単に言うと、最高の時計と称されるほどで、世界3大時計と言った場合、パテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンティン、ランゲ&ゾーネ、オーデマピゲの中から3つ、が選ばれている事が多いのですが、パテックフィリップが外れることはない、という点からも、いかに別格か、が分かると思います。個人的には、2位のヴァシュロンも堅いとは思うのですが、ここはまた別の話題になるので、今回はこの辺で。

さて、本題に戻って、ファイナンスの観点からの解説です。
今回のイベント、入場料も無料、図録等は寄付に、とされている一方、時計の輸送や保険、会場代や人件費等、費用は膨大にかかっていると予想されます。つまり、このイベントだけで見ると大赤字になります。

もちろん、パテックフィリップも、利益を追求する株式会社なので、完全チャリティーで実施している訳ではありません。結論から言うと、PR(広告宣伝)目的と想定されます。どういう事かと言うと、少し数値を使って説明していきたいと思います。なお、この数値に関しては、完全に筆者の仮定におけるものであり、実際のパテックフィリップの数値を利用している訳ではない(外部から知る手段がないので)、という点、予めお伝えしておきます。

さて、このようなイベントを行う場合、たいてい最初に開催目的とターゲットを決めておく、というのが一般的かと思います。今回の例では、購入率は同じ、平均単価は新規顧客の影響で10%減、認知度が5%上昇すると仮定して進めます。

結果、まとめると以下のような形になります。もちろん、本来はもっと精緻に行われていると思いますが、今回は説明の便宜上きわめて簡素化しています。

これを見てもらうと一目瞭然ですが、この仮定のまま進んだとすると、1年で25億円の売上増加に繋がる、という事が分かります。もちろん、原価も加味する必要があるので、仮に原価率35%とすると、8.75億円なので、イベント費用がこれ以下であれば、1年で回収が出来てしまう、という形になります。実際は、認知度の増加もここまで劇的に増えないでしょうし、購入率も若干下がるでしょうから、もう少し下がっては来ると思います。しかしながら、ビジネスの投資として考えても割に全く合わない、という事はない、という事が分かると思います。

とは言え、展示会はとても素晴らしいものでしたので、観覧中はこのようなビジネス的なことはいったん脇に置き、純粋に思考の芸術品の数々を楽しんでいました。