コラム

移転価格文書化 – どこまで外部に委託するか?

前回のブログで移転価格計算方式について、TNMM vs その他の計算方式という事で、記載しました。今回はその続きで、外部に委託する理由と、どこまで委託するか?という点を取り上げてみます。

結論

比較分析の箇所のみ外部委託

少し長いので結論から記載しました。次節以降で、税理士法人への委託がそもそも必要な理由と委託範囲について説明していきます。

なぜ税理士法人やコンサルに委託が必要か?

回答はシンプルで自社のみでは(ほぼ)不可能だからです。興味がある方は、ぜひ前回のブログもご覧ください

移転価格の計算方法 TNMM vs その他の計算方法 – 田村宏明公認会計士事務所 (tamura-cpafirm.jp)
移転価格の文書化では、計算方式を決定する際にどの企業を選定するかという点が非常に重要になります。これは、企業が好きなように選定できるとしてしまうと、自社にとって都合の良い比較会社を選定する事が可能になるためです。

では、税務調査の際に税務署側はどのように比較会社を選定するか、というと移転価格用のデータベースを持っておりこれを利用して選定してきます。となると、会社側もリスクを避けるのであれば、同じようにデータベースから条件を入力して比較会社を選定すれば、ほぼ同じ結果になるためリスクも下げることができます。

ただ、このデータベースの利用料が極めて高額なのと通常1社で1つの移転価格文書の作成となるので、この1つの文書を作成するために、わざわざデータベースの利用料を支払いかつ使用方法を習得するというのは、費用対効果が極めて悪いという事になります。

税理士法人への委託範囲

上記までで、委託の必要性は分かったとして、ではどこまで委託するか?という点が次の論点になります。

  • 移転価格文書化の全て
  • 移転価格文書の一部
  • 比較分析の箇所のみ委託

上から順に、外部への委託範囲が大きいものとなります。それぞれのメリット・デメリットは以下になります。

文書化の全てを委託
メリット
  • 税理士法人に言われたとおりに作業をすればよい
  • 文書の作りこみを完全に任せられる
デメリット
  • 資料の収集自体は結局自社で集める必要がある
  • 税理士法人に自社の業務内容をいちから完全に理解してもらう必要があり、レクチャーの時間が非常にかかる
  • 極めてフィーが高額になる
一部を委託
メリット
  • スケジューリングや必要事項は管理してもらえる
  • 全部委託のときと異なり、業務内容を全て詳細に理解してもらう必要はない
  • フィーも全部委託よりは安価になる
デメリット
  • どこまでを委託するかの切り分けが難しく曖昧になりやすい
  • 全部委託よりはフィーは安価になるが、それでもまだ高額
比較分析のみ委託
メリット
  • 圧倒的にフィーは安い
デメリット
  • 移転価格の基礎知識が部内に必要になり、少なくとも1人は理解している人が必要
  • 文書自体の作成は比較分析以外の箇所は自社で作成が必要

まとめ

費用対効果の観点と、自社内で1人は移転価格について基礎的な知識を有している人材は必要と考えるので、状況が許すのであれば”比較分析のみ委託“がお勧めです。

私がいままで関与した会社は、1社を除き全て”比較分析のみ委託”、を採用していました。その1社は東証1部上場で1兆円を超える売上の会社、かつ移転価格の人材が部内にいない、という事で”全部委託”を採用していました。

移転価格文書化を進める際に、少しでもご参考になれば幸いです。