コラム

外資系経理の海外親会社とのコミュニケーション

はじめに

外資系企業で経理業務を担当する際、海外の親会社との円滑なコミュニケーションは欠かせません。異なる言語・文化・会計基準の中で、正確な情報をやり取りすることが求められます。本記事では、海外親会社とのコミュニケーションをテーマに解説します。

1. 海外親会社とのコミュニケーションの重要性

1.1. 正確な財務報告のため

海外親会社への財務報告は、グループ全体の経営判断に影響を与えます。ミスや誤解があると、企業全体の意思決定に悪影響を及ぼす可能性があります。

1.2. キャリアアップのチャンス

英語での円滑な報告能力や交渉スキルを持つ経理担当者は、外資系企業内での昇進やキャリアの可能性が広がります。

2. コミュニケーションの具体的なポイント

2.1. 会計用語を正しく理解する

海外親会社とのやり取りでは、英語での会計用語の理解が必須です。ただし、頻出する会計用語はある程度限られているため、日常的なやり取りの中で自然と覚えていくと思います。以下は一例になります。

日本語英語
売上高Revenue
営業利益Operating Profit
連結決算Consolidated Financial Statements
貸借対照表Balance Sheet
キャッシュフロー計算書Cash Flow Statement
2.2. 明確で簡潔なレポーティングを心がける

海外とのコミュニケーションでは簡潔に説明するという能力が非常に重要になります。英語の文化自体が、日本語とは異なり要点のみを伝えることに注力しているため、文章を冗長に記載するのは嫌がられる可能性が高いです。以下3点は簡単なポイントを記載したものになります。

  • 数値データは表やグラフを活用して視覚的に伝える
  • 要点を簡潔にまとめ、過度な説明を省く
  • 「何が」 「なぜ」 「どうすべきか」を明確にする
2.3. 定期的なミーティングを活用する

この点は、企業によって状況も異なるので定期的にではなく、トピックが発生する都度に随時ミーティングが開催されるケースもあります。私が勤務していた会社も、定期的なミーティングのケースと随時のケースと両方ありました。なお、定期的なミーティングがある場合は下記のポイントは押さえておくとよいと思います。

  • 定例のオンラインミーティングを設定し、進捗報告を行う
  • 事前に議題を共有し、効率的な会議運営を心がける
  • 不明点は事前に質問リストを作成し、的確に回答を得る
2.4. 文化の違いを理解する

この点もかなり重要だと個人的には考えます。例えば日本語は婉曲な表現などもかなり豊富にありますし直接的な表現が避けられる場合もあります。一方、英語にも婉曲的な表現はあるものの日本語に比べると直接的な表現が多く、ストレートなコミュニケーションも良くあります。慣れていないと、一瞬リアクションが冷たいと感じるかもしれませんが、これは文化の違いによるものの可能性もあります。

また、期限に関する考え方についても、日本人は出来るだけ期限内に簡潔させる形で物事を勧めますが、他国では期限とはあくまで目標値と考えているケースもあり、この辺りも認識が合っていないとトラブルの原因になります。なお、下記がポイントになる点です。

  • 直接的な表現を避け、柔らかい表現を使う(例:「We may need to reconsider」→「見直しが必要かもしれません」 )
  • メールや会話のニュアンスを考慮し、誤解を避ける
  • 企業文化の違いを尊重し、相手の価値観を理解する

3. 効果的なツールの活用

3.1. ビジネス英語の強化

最近は生成型AI含めて、各種ツールが劇的に進歩しています。特にGoolge翻訳など翻訳系のアプリは3年前と比較すると精度も非常に向上していますので、お勧めです。

  • Grammarly:英語の文章をリアルタイムでチェック
  • ChatGPT : 英訳・和訳及び文章のスタイルなどもサポート
  • DeepL翻訳:高精度な英訳・和訳をサポート
  • Google翻訳:同上
3.2. コラボレーションツールの活用

コラボレーションツールは下記以外にもZoomや、Google Meetなどもあります。つい最近、Skypeのサービス終了が話題になりましたが私自身、Skype英会話でかなりお世話になっていたので、寂しい思いがありますが一方で新規ツールや既存ツールの発展にも期待しています。

ツール主な用途
Microsoft Teamsオンライン会議・チャット
Slack短文のやり取り・リアルタイムの質問
Trello業務の進捗管理
Google Driveファイル共有・共同編集

4. まとめ

上記まで見てきましたが、外資系企業の経理担当者にとって海外親会社とのコミュニケーションは出来るに越したことがない能力になります。英語力を磨くことはもちろん、適切なツールの活用、文化的理解、明確なレポーティングを意識することで、円滑なやり取りが可能になります。