コラム

KERINGが化粧品内製化から撤退 – 今後のトレンドにも大きな影響が!?

ケリングから衝撃のニュースが発表されました。なんと、ケリングがロレアルと50年という超長期的なパートナーシップ契約を締結するという内容です。出展は下記のリンクになります。

Kering and L’Oréal Forge an Alliance in Beauty and Wellness | Kering

つい半年前の6月にラグジュアリー大手の化粧品分野への進出という論文を執筆し、その中で大手ラグジュアリーブランドが化粧品分野に進出している理由について触れました。そして、当論文の限界としてこれらの大手ラグジュアリーブランドの化粧品進出が果たして成功するかは、まだ撤退実績が出ておらず仮説の正確性の検証はできないとして締めました。

私自身も、3-5年後に再度本論文の後続研究をと考えていましたが、図らずも半年で撤退実績が出てしまいました。ただ、撤退するとしたら財務状況が極めて厳しいKERINGが最初になるのでは、と考えていたので、その点は予想と一致していましたが何分想定より遥かに早いタイミングでした。

このニュースから分かることは、下記の2点になります

  1. 化粧品ビジネス内製化の難しさ
  2. KERINGの化粧品ビジネスからの後退

1.については、やはり自社で内製化となるとノウハウがないのと化粧品は研究開発費に莫大な金額がかかるため、ある程度の投資も必要になるので盤石な財務基盤がないと、難しいというのが今回改めて明らかになりました。ファッションビジネスと化粧品ビジネスは商品の特性も全く異なるので、その点でも難しかったのではないかと想像します。

2.についてはロレアルと長期的なパートナーシップ契約を結ぶという事は、裏を返すと化粧品ビジネスの完全内製化という道を閉ざしたことになります。個人的にはLVMHグループのコスメ部門に対して、リシュモン&ケリングはどう対抗するかという点を非常に楽しみにしていたので、少し残念な思いはあります。リリースを見ると、ロレアルはケリングに対してロイヤリティも支払うとあるので、ケリングから見るとローリスクで確実なリターンをという戦略を取った形になります。

なおバリューは40億ユーロとあるので日本円で約7,000億円で評価されているという事になります。LVMHがブルガリを買収した際の評価額が37億ユーロだったため、ほぼ同じくらいの評価額という事になります。こうしてみると、本ニュースがどれほど大きなものかが分かると思います。

このニュースを受けて、リシュモンが今後どのような化粧品戦略をとるのかについて、引き続き注視していきたいと思います。