コラム

LVMH・Richemont・Kering・Hermèsの株価はこの1年でどう動いたか – 2026年春に見るラグジュアリー業界の現在

【要点サマリー】

  • 2025年4月〜2026年4月で株価は大きく分化
  • Keringは再建期待で大幅上昇、Hermèsは高評価の調整で下落
  • 中国需要・関税・景気不透明感が共通の背景
  • 「ジュエリー vs ファッション」で評価が分かれた

株価推移(1年間の比較)

以下は2025年4月10日を0とした場合の株価変化のイメージです。なお、株価のチャートはBloombergより抜粋しています。
Stocks – Bloomberg – Bloomberg Markets

まず確認したい、4社の過去1年株価推移(実数)

  • Kering:約+67.1%(165.92 → 277.25ユーロ)
  • Richemont:約+12.7%(134.50 → 151.60CHF)
  • LVMH:約▲1.7%(507.63 → 498.85ユーロ)
  • Hermès:約▲21.1%(2,240 → 1,768ユーロ)

同じラグジュアリー業界でも、ここまで明確に方向性が分かれた1年でした。

なぜここまで差がついたのか

1. 中国需要の「質」が変わった

単純な回復ではなく、「以前ほど伸びないが、消えるわけでもない」という状態に移行しています。

KERINGは絶好調というよりも、想定よりも中国市場の落ち込みが小さかったためGood Surpriseのようになったという点も挙げられます。一方でRichemontは、カルティエやヴァンクリーフ&アーペルなど資産性の高いジュエリー需要に支えられ、比較的安定した評価を維持しています。

2. 関税と景気不透明感

2025年以降の関税議論は、コスト以上に「富裕層の消費心理」に影響を与えました。

ラグジュアリー企業は価格転嫁が可能であっても、株式市場は景気減速を先に織り込みます。このため、業績と株価が乖離する局面が目立ちました。また、直近の3月にはイラン戦争の見通しの悪さやマクロ経済への悲観的な観測もあり、例年であればQ1の成績が発表される前であり株価も比較的穏やかに推移する時期ではあるものの、動きの大きい展開が続きました。

3. ビジネスモデルの違い

この1年で明確になったのは、次の構図です。

  • ジュエリー(Richemont):景気耐性が高く安定
  • ファッション(LVMH・Kering):景気と期待に左右されやすい
  • 超高級ブランド(Hermès):株価が他の高級ブランドより高く、ネガティブ材料が発生したときの影響も受けやすい

Keringの上昇は、構造的成長というより「再建期待」の再評価という側面が強い点も非常に重要になります。過去5年のトレンドで見るとその点が明らかになります。

2026年春時点の整理

  • LVMH:市場全体の温度感を反映する代表銘柄
  • Richemont:ディフェンシブ寄りのラグジュアリー
  • Kering:ターンアラウンド銘柄
  • Hermès:ブランドの格としては最高だがバリュエーション調整中

ラグジュアリー株は現在、「ブランド力」ではなく「期待の織り込み度」で評価が分かれるフェーズにあります。

まとめ

この1年の株価推移は、ラグジュアリー業界を単純化して捉えることの難しさを示しています。
重要なのは、「良い企業かどうか」ではなく、「その良さがすでに評価されているか」という視点です。