コラム

【2026年6月】ラグジュアリーブランド決算比較|リシュモン独走、KERINGに回復の兆候は本物か

ラグジュアリー業界を代表するLVMH、Richemont、KERINGの最新決算が出そろいました。売上成長率はRichemontが17%増、LVMHとKERINGはともに3%減です。

しかし、同じ減収でも内容は異なります。LVMHは高い収益力を維持する「踊り場」、KERINGは構造改革を伴う「回復局面」にあります。今回の決算は、ブランド力だけでなく、各社の事業ポートフォリオが企業業績を大きく左右することを示しています。

第1章 ラグジュアリー3社の最新決算比較

成長率の方向性に注目する

Richemontは売上が報告ベースで17%増、為替影響を除くと20%増となりました。一方、LVMHは報告ベースで3%減ながら、オーガニックベースでは2%増です。

Keringも報告ベースでは3%減ですが、実質ベースでは1%増となりました。さらに4~6月期は2%増と、四半期ベースで約3年ぶりに成長へ回帰しています。同じ3%減でも、LVMHは安定、Keringは反転という違いがあります。

第2章 Richemontが選ばれる理由

ジュエリーを中心としたブランドポートフォリオ

Richemontの成長を支えたのは、CartierやVan Cleef & Arpelsを擁するジュエリー部門です。同部門は為替影響を除いて24%増となり、7四半期連続の2桁成長を記録しました。

日本は36%増、米州は27%増となるなど、特定地域に依存していない点も重要です。高価格帯ジュエリーは希少性、資産性、贈答需要を兼ね備えており、景気変動に対する耐性が比較的高いカテゴリーと考えられます。

第3章 LVMHとKERINGに見るラグジュアリー業界の構造

LVMHモデルとKERINGの再建

LVMHではウォッチ&ジュエリー部門が9%増となり、ファッション&レザーグッズ部門の弱さを補いました。営業利益率も22.5%を維持しており、多様なブランドを保有するLVMHモデルの安定性が表れています。

KERINGは半年間で直営店舗を84店舗純減させ、営業費用を5%削減しました。Gucciも売上は5%減ですが、営業利益率は16%から17%へ改善しています。「利益率を先に立て直し、売上回復を待つ」という再建の順序が明確になっています。

第4章 投資・財務の視点

企業価値を左右するポートフォリオの質

今回の決算比較は、M&Aやブランド投資では売上規模だけでなく、カテゴリー構成を評価する必要があることを示しています。Richemontはジュエリー需要の追い風を最大限に享受し、LVMHは分散されたブランド群によって収益を安定させています。

KERINGについては、店舗削減による固定費圧縮が利益率改善につながりました。今後はコスト削減ではなく、Gucciの既存店売上や商品回転率が回復するかが企業価値評価の焦点になります。

まとめ

Richemontはジュエリー需要の勝利、LVMHは事業分散による安定、Keringはリストラクチャリングによる回復と整理できます。次の焦点は、KERINGのコスト改革とGucciの売上回復が同時に実現するかどうかです。

公認会計士としての視点

ラグジュアリー企業を分析する際は、売上成長率だけでなく、営業利益率、店舗数、固定費構造、ブランド別の資本効率を見る必要があります。税務面でも、店舗再編やブランド事業の国際展開は、撤退費用、移転価格、無形資産の管理に影響します。

ブランドは貸借対照表に十分表れない重要資産です。だからこそ、経営戦略と財務数値を結び付けて評価することが、ラグジュアリー企業の企業価値を理解するうえで不可欠になります。